BCPは作成・周知・研修・訓練・見直しまで準備する
厚生労働省は、介護施設・事業所向けに感染症と自然災害の業務継続ガイドライン、ひな形、研修動画を公開しています。訪問系の資料を選び、入所施設向けの記載をそのまま使わないようにします。
岡山県の令和8年度訪問介護自己点検シートでも、計画の策定と必要な措置、職員への周知、定期的な研修・訓練、見直しが確認されています。開業予定地に適用される運営基準と指定権者の最新案内を確認し、作成後の運用を工程に含めましょう。
以下の整理表や訓練の例は編集部の実務提案です。全国統一の法定様式や、一律の備蓄量・訓練回数を示すものではありません。感染症の個別対応や医療上の判断は、関係する公的案内や専門職との確認を踏まえて別途準備します。
感染症と自然災害で「使えなくなるもの」を想定する
感染症では複数職員の欠勤や支援方法の調整、自然災害では停電、通信障害、事業所の被災、移動経路の寸断などを考えます。共通する連絡体制はそろえつつ、それぞれの発生場面と必要な対応を区別します。
| 想定する影響 | 開業前に確認すること | 計画へ落とし込む内容 |
|---|---|---|
| 職員の欠勤 | 出勤できる人数、代行できる役割 | 勤務調整、連絡担当、応援相談先 |
| 移動の制約 | 地域の災害リスクと訪問経路 | 安全確認と訪問の調整方法 |
| 停電・通信障害 | 連絡手段、電源、情報の確認方法 | 代替手段と保管場所 |
| 物資の不足 | 業務に必要な物品、在庫、補充先 | 管理担当と発注・点検の方法 |
| 支援の調整 | 利用者の状況と関係事業者 | 優先事項の確認と連携方法 |
地域のハザードマップなどを確認し、事業所所在地だけでなく、訪問先や移動範囲への影響も考えます。災害の規模にかかわらず職員へ無条件の出勤や訪問を求める計画にせず、安全確認と判断の責任者を明確にしてください。
優先業務は、利用者の状況と連携先を踏まえて決める
人員が限られるときに何を優先するかは、利用者ごとの生活や支援の必要性、家族等の支援状況、関係事業者との調整により異なります。「身体介護は全部継続、生活援助は全部停止」のような一律の区分だけで決めないようにします。
開業前で利用者が未定なら、利用開始時に必要な情報を確認して計画へ反映する手順を決めます。確認担当、関係するケアマネジャー等との相談方法、情報の更新時期を用意しておくと、空欄のまま放置することを防げます。
責任者が不在でも判断と連絡を引き継げるようにする
管理者、サービス提供責任者、連絡や記録の担当を整理し、代行者を決めます。職員の安否・勤務可能状況を誰が集め、利用者や関係先への連絡を誰が担当し、支援の調整を誰が確認するかを示します。連絡先の整理は緊急連絡体制の作り方も参照できます。
人員・通信・物資は、代替手段まで確認する
通常の電話や業務システムが使えない場合を考え、代わりの連絡方法と必要情報の確認方法を決めます。紙を用意する場合も、利用者情報を無制限に複製せず、保管・持ち出し・旧版回収のルールと合わせて整えます。
備品は、事業所の職員数や業務、想定する期間、保管場所から必要量を検討します。照明、充電、衛生用品など、何のために用意するかを確認し、使用期限や点検担当を記録します。必要な品目は開業備品リストと納品チェックと合わせて整理すると、重複購入を減らせます。
他事業所からの応援や連携を見込む場合は、相手の了解がないまま「応援可能」と書かないようにします。どの窓口に、どんな状況を伝えて相談するか、平時に確認できる範囲を整理してください。外部への個人情報の共有も、適用されるルールと必要な手続きを確認します。
研修と机上訓練で、計画どおりに動けるか確かめる
研修では計画の目的と役割を共有し、訓練では想定した場面で職員が何をするか確認します。厚生労働省の訪問系向け教材も参考に、事業所の勤務や連絡方法に合わせた場面を選びます。
- 場面を決める:例えば、停電で通常の電話とシステムが使えない想定にする
- 使える条件を確認する:出勤可能な職員、移動状況、連絡手段を整理する
- 役割ごとに動きを説明する:安否確認、連絡、支援調整、記録を確認する
- 止まった部分を記録する:資料が見つからない、代行者が不明などを残す
- 修正して共有する:担当と期限を決め、計画と関連資料へ反映する
訓練には架空の利用者・連絡先を使い、実際の救急窓口や関係先へ不要な発信をしないようにします。初回から複雑な災害をすべて盛り込まず、連絡手段の切り替えなど一つの課題から確かめる方法もあります。これは訓練を進める実務例です。
訓練記録は、実施と改善の両方を残す
実施日時、参加者、想定、使った計画の版、確認した行動、課題、修正担当、修正日を残します。欠席者への説明も計画し、職員の入れ替わりや連絡方法の変更時に、計画と教材を見直します。入職時の説明は採用・入職準備のスケジュールへ組み込めます。
訪問介護のBCP|開業前チェックリスト
- 訪問系の公的資料と指定権者の最新案内を確認した
- 感染症と自然災害の両方の影響を整理した
- 責任者、代行者、連絡・記録担当を決めた
- 利用者別の優先事項を確認・更新する手順がある
- 職員の安全確認と勤務調整の方法を決めた
- 通信・電源・必要情報の代替手段を確認した
- 物資の保管、補充、期限点検の担当を決めた
- 研修・訓練と見直しの予定を記録した
計画の完成日だけでなく、職員への説明日と初回の訓練予定日まで決めておきます。ひな形の空欄を埋めることから一歩進み、限られた体制でどこに相談し、何を確認して動くかを共有しましょう。
BCP準備のよくある質問
厚生労働省のひな形を埋めればBCPは完成ですか?
ひな形を参考に、事業所の地域、勤務体制、利用者支援、連携先に合わせて具体化します。職員が内容を確認し、研修や訓練で課題を見つけ、必要な見直しまで行います。
緊急連絡網があればBCPの代わりになりますか?
連絡網はBCPの一部として役立ちますが、継続する業務、人員や物資の確保、連携や再開の判断も必要です。連絡先の一覧と、限られた体制でどう業務を続けるかをつなげて準備します。
開業前で利用者が未定の場合はどう準備しますか?
責任者と代行者、職員の安否確認、地域のリスク、通信・備品・連携の確認など共通部分を整えます。利用開始時に利用者別の情報や支援上の留意点を確認し、計画へ反映する担当と手順を決めます。
