結論:全国一律の「開業資金」はない
必要額は、事務所の取得・改修、採用人数、車両、備品、自治体の申請方法などで変わります。日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査では、融資先を対象とした全業種の開業費用平均は975万円です。ただし、これは訪問介護だけの目安ではありません。自社の見積りに置き換えるための比較材料として扱います。
必要資金 = 初期費用 + 開業後の運転資金 + 予備費。資金調達額と混同せず、支払時期まで月別に置きます。
初期費用に入れる項目
法人・申請
- 法人設立、登記、印鑑、証明書の取得
- 指定申請に関する証明書・図面・郵送等
- 自治体で設定されている場合の申請手数料
- 専門家へ依頼する場合の報酬
申請手数料や提出方法は指定権者ごとに確認します。必要書類は訪問介護の指定申請・必要書類で整理しています。
事務所・設備
- 敷金・保証金・仲介料・前家賃
- 基準に合わせた改修、看板、家具、施錠保管庫
- パソコン、電話、複合機、ネット回線
- 車両、自転車、スマートフォン、訪問用品
物件は契約や改修の前に、図面を指定権者へ相談します。設備購入後に基準不適合が判明すると、追加費用が発生します。
採用・開業準備
- 求人掲載、紹介料、健康診断、研修
- 開業前から勤務する職員の給与・交通費
- 介護ソフトの初期費用、設定・研修
- 契約書、名刺、案内資料、消耗品
運転資金は「毎月」と「入金日」で見る
家賃、給与、社会保険料、通信費、車両費、保険、ソフト利用料などを月ごとに並べます。さらに、指定を受けても利用者がすぐ計画数に達するとは限らず、サービス提供から請求・入金まで時間差があります。
| 区分 | 確認する内容 |
|---|---|
| 固定費 | 家賃、基本給、社会保険、通信、ソフト、保険 |
| 変動費 | 移動、駐車、消耗品、時間外勤務など |
| 売上 | 利用者数、訪問回数、単価、開始月、請求・入金月 |
| 慎重ケース | 利用者獲得や採用が遅れた場合の現金残高 |
給与と家賃は売上が計画未達でも支払いが続きます。「黒字になる月」ではなく「預金残高が底をつかないか」を確認します。
資金計画は5段階で作る
- 見積りを取る:物件、通信、ソフト、車両などは概算だけで終わらせません。
- 一時費用と月額費用を分ける:初期費用の安さだけでサービスを選ばないようにします。
- 支払月を置く:敷金、採用費、給与、社会保険料の時期を整理します。
- 売上を3通りで置く:標準・慎重・さらに遅れたケースを比べます。
- 毎月更新する:採用、物件、指定日、利用者見込みが変わったら残高を更新します。
6か月の逆算スケジュールと同じ月区分で資金表を作ると、作業と支払いを照合できます。
自己資金・融資・補助金を混同しない
日本政策金融公庫は創業計画書で、設備資金と運転資金、自己資金と借入などを対応させる形を示しています。融資は返済計画を含めて検討します。補助金・助成金は対象、申請時期、交付決定前の契約可否、後払いかどうかが制度ごとに異なります。「採択されれば入るお金」を、確定した開業資金として先に使わない計画が安全です。
開業資金のFAQ
訪問介護はいくらあれば開業できますか?
全国一律の金額はありません。初期費用と、入金までの運転資金を自社条件で積み上げます。
自己資金だけで開業できますか?
個別計画によります。売上が計画を下回っても支払いを続けられるか確認してください。
補助金を開業資金に入れてよいですか?
交付決定、対象経費、支払時期を確認するまで、確定入金として扱わない方が安全です。
